— IWCのタイムピースが秀逸な理由
スイスの大半の時計マニュファクチュールはフランス語圏に本拠地を置いているため、シャフハウゼンはこの国の時計産業における陸の孤島のような存在です。しかし、創業当初からこのような特異な地理的条件があったが故に、時計製造への情熱と衰えることのない企業家精神、そして完璧なクラフツマンシップを基盤とする哲学が培われてきたのです。国際的な高級ブランドとして、IWCはこれまで革新的な機械式時計に特化することを積極的に進めてきました。IWCをお選びになるお客様は、精密さ、機能的なデザイン、そして長い寿命だけでなく、世界でもほんのわずかな時計メーカーだけが提供できる先端技術に期待を寄せています。シャフハウゼンを拠点とするIWCの確固たる名声の一番の基盤となっているものは、高い資質を持つ時計職人が、ミニッツ・リピーター、パワーリザーブ、トゥールビヨン、永久カレンダーといったコンプリケーションの製造工程のすべての段階を習得しているという事実に他なりません。IWCが謳う卓越性、“Probus Scafusia”(プローブス・スカフージア)、すなわち1903年に定められた「シャフハウゼンの優秀な、そして徹底したクラフツマンシップ」というモットーには、使う喜びと将来に渡って変わることのない価値を備えた精密なタイムピースを作りたいという願いが込められています。
IWCの理念は、時計製作への熱き情熱と、
弛まぬ起業家精神、
完璧なクラフツマンシップに基づいています
IWCで働く時計デザイナーやエンジニアにとって、これは大きな挑戦であると同時に、より良いものを製作するための原動力でもあります。IWCの時計はすべてプロの時計職人の手によって仕上げられます。彼らは、鍛え抜かれた目と繊細な指先、そして精密工具を駆使し、個々の部品を丹念に組み立てIWCの時計を作り上げます。IWCの時計は、正確さ、機能、デザインのどれ1つをとっても緻密な技の見事な手本であり、高級時計製造技術の頂点を極める作品にほかなりません。
新しいモデルの開発では、まず初めに、時計デザイナーやエンジニアが目指しているものは何か、その時計が複雑機構という点で新しい基準を確立することを求めているのか、一番強化したいポイントはパワーリザーブなのか防水性なのか、といった問題に答えを出さなければなりません。最初の工程では、コンピューター設計システムを用い、構成部品の「原型」を作ります。IWCは、近代的な生産技術を設計とデザインの中に取り入れることを常に重視しています。時計デザイナーは、設計技師と密に対話を重ね、フォルムと機能との理想的な調和について、その方法を決定するという重要な役割を担っています。文字盤、ストラップ、ブレスレット、表示の配置、素材や色、表面の仕上げは、常にチームの協力によって緻密に決定されます。技術的な成果や魅了するデザイン以外にも、実際に時計を着用したときの感触といった、より感情に訴える要素も重要です。それゆえ、ケースに触れたときのエッジの感触やプッシュボタンの作動の仕方、リューズの音までもが充分に配慮されています。製造技術者と時計デザイナーが、古い設計図からアイデアを得ることもめずらしくありません。それはIWCの歴代の先駆者、すなわち時計製造のパイオニアに対する敬意の念を抱いているからです。
それはIWCの歴代の先駆者、
すなわち時計製造のパイオニアに対する
敬意の念なのです
厳しい検査やテストプログラムに支えられた高度な開発と品質管理システムが確立されているからこそ、IWCは最高水準の品質を保証することができるのです。使用される先進の科学メソッドには、3次元コンピューターシミュレーションやX線を利用した物質解析、さらには日常的な条件下や、より過酷な条件下で時計がどのように作動するかを確かめるテストなどが含まれます。ハイスピードカメラやレーザー測定機がきわめて微細な動きを捉え、最新のコンピュータプログラムが、各種ストレスに対するパーツの耐性を厳密に計算します。
パッキン、プッシュボタン、歯車、レバー、軸、歯の形状やゼンマイの寸法などの細かな部分については、開発の初期段階から、予想される誤差要因を調べます。IWCは、この工程を「誤差要因分析」と呼んでいます。また、開発者は、IWCの時計がいつまでも動き続け、何年先でも修理ができるように、信頼性が高く、なおかつアフターサービスが容易にできるデザインを設計します。
「クオリフィケーション」と呼ばれるプログラムには、新製品のプロトタイプや、それより後の承認段階にある試作品に対して数か月にわたって行われる、およそ30の過酷なテストが含まれます。これらのテストでは、時計に想定される長い寿命において、日常的、あるいは極端な環境下で生じ得る様々な現象を凝縮してシミュレーションを行います。厳しいテストに合格したいくつかのプロトタイプから試作品の製造を行い、まったく問題が生じないことが確認されて初めて、製品化へ移るのです。こうしてIWCの伝説にまたひとつ素晴らしい章が書き加えられていきます。
衝撃テストでは、時計に様々な加速度を加えます。通常の重力加速度は1G=9.81m/s² です。ケースに入った重さ100グラムの時計に100Gの重力がかかった場合、時計の構成部品が短時間に受ける力は10キログラムに相当します。IWCの「パイロット・ウォッチ」は、遠心加速器において、数分間30Gの力を加える試験にも合格しています。振り子型衝撃試験機でのテストでは、コンマ数秒間、5000Gの力が時計に加えられます。このテストは、硬い木のフローリングの上に1mの高さから時計を落下させた場合の衝撃をシミュレートしたものです。最も過酷な検査の一つが「耐衝撃テスト」です。このテストにおいて、時計は小さな箱の中で何時間も揺すられ(25Gのシミュレーションで140,000回、100Gで94,000回、500Gで960回)、あらゆる角度から衝撃が加えられます。
摩耗や破損しやすい構成部品は、最低限必要な条件を満たしているかを確認するため、設計段階のできるだけ早い段階に製造されます。たとえば、耐用年数10年以上を保証する「アクアタイマー」の回転ベゼルなら、1日4回の潜水を10年間行ったことに相当する疲労テストを行います。
気候テストでは、時計が使用される可能性のあるあらゆる温度条件の下で、体系的に試験が行われます。地理的条件で言うと、北のアラスカから南のサハラ砂漠、ブラジルの熱帯雨林にまで及びます。このテストでは、数日から数週間の間、時計を試験室に置いて摂氏マイナス20度からプラス70度にまでおよぶ気温差と湿度95パーセントという極端な温度変化にさらします。次に、時計の歩度を長期に渡り測定します。自動式のマルチレベルマイクロホンを利用して、時計が刻むビートの規則性を調べます。
摂氏37度の塩水電解槽に時計を2週間浸すテストは、日常の使用はもとより、塩分濃度の高い水中でも腐食しない素材が選ばれていることを保証します。IWCのダイバーズ・ウォッチに装着されている回転ベゼルは、汚れた水の中でも信頼性を維持することを証明しなければなりません。ガラスおよび文字盤は数日間強力な紫外線にさらされ、色の変化がないことを確認します。
実験室で行われる定例のテストだけでは、実際の生活で起こりうるすべての状況をすべてシミュレーションできるわけではありません。そこで、新製品はすべて社内外の人が実際に着用し、日常生活のなかで試用します。モデルによっては、時計を着用したまま薪を割ったり、ダイビングしたり、ゴルフやマウンテンバイクを楽しんだり、時には標高3,000メートルの山に登ったりして、その性能を確認します。
部品製造においては、CNC制御のフライス盤を用いて、様々な素材が加工されます。表面加工を終えたパーツの許容誤差範囲は通常わずかに+/-0.02mmですが、場合によっては+/-0.002mmまで追求されます。加工後、部品は手作業で仕上げられるか、放電加工の工程に進みます。CNC放電加工機は、主としてムーブメントのパーツ製造に利用され、パーツの表面の荒さを0.005mmの許容差まで制御することができます。そして、より精密なEDMマシンでは、許容差を0.001mmまで高めることができます。
ムーブメントの組み立てでは、巻き上げ機構、輪列、脱進機、時計の精度調整の4つの作業が行なわれます。モデルに応じて、自動巻き上げ機構やクロノグラフ機構、あるいはカレンダー機構や積算計などがさらに加わります。これらの作業のなかでとりわけ複雑なのが、脱進機の調整とテンプを水平に保ち正確に作動させるための調整です。これは手作業でしか実現できない極めて精密なプロセスで、いかなる機器を使ってもその高い水準には遠く及びません。機能や精度調整は、組み立ての各段階で継続的に点検・修正が施されます。この後、特殊機能を扱うスペシャリティ部門の卓越した技術を持つ時計職人により、永久カレンダーやスプリット・セコンド機構、トゥールビヨンなどの複雑機構が、ベースとなるムーブメントに組み込まれていきます。ミニッツ・リピーター機能を装備するムーブメントは、ここですべて組み立てられます。
機能調整の後、熟練の職人技によって
IWCの規格に合うよう、パーツ表面に
仕上げ加工が施されていきます
追求される精度と費やされる労力でいえば、ケース製造も他の製造工程に勝るとも劣りません。プラチナケースの場合、1kgのプラチナ塊からワイヤー放電加工機によって2片の地金が切り出されます。こうした貴金属製の時計では、ケースのパーツは鋳造されたものを調達します。一方、ステンレススティールやチタニウム製のケースでは、棒状の地金をCNC旋盤やフライス盤を使って加工を行います。部品の真円度公差は0.03mm未満が要求されます。フライス盤は、ストラップやブレスレットのためのラグのカットや、リューズやプッシュボタンの取り付けに必要なケースへの穴開け、また、「ダ・ヴィンチ・クロノグラフ」などの複雑な開曲面の製作のために使用されます。機能調整の後、熟練の職人技によってIWCの規格に合うよう、パーツ表面に仕上げ加工が施されます。エッジは面取りによって滑らかに仕上げられ、必要な部分にはファセット(切子)が入れられます。旋盤加工やフライス加工の痕跡はすべて取り去られ、表面は、艶消し仕上げやポリッシュ仕上げ、サテン仕上げやブラスト仕上げなどが施されていきます。また、専門部門によって、ペルラージュを初めとする装飾加工が、ケースやパーツに施されます。そして、最大60個からなるパーツを合わせて、ケースを組み立てていきます。最後に、防水性や外観など一連の複雑な検査を経て、ケースの製造工程は終了となります。
文字盤、針、ケーシングの部門では、すべての工程が手作業で行われています。モデルに応じて、熟練の職人が特別な工具を駆使しながら、完璧に時刻調整されたムーブメントに、文字盤を手作業で取り付けていきます。同様のことが針にも行われます。針は軸に対して正確な高さと強さでしっかりと固定されていなけれなりません。クロノグラフの場合は、針が元のゼロ位置に正しく戻らなくてはなりません。ムーブメントは、ケーシングリングを介してケースに固定されるか、直接ケースに固定されます。ムーブメントをケーシングリングで固定する場合は、ケーシングリングを裏蓋のウェーブスプリングによって所定の位置に保持します。巻き芯は1本ずつ調整されます。特殊な接着剤を使い、巻き芯に留めたリューズを確実に固定します。
自動巻きムーブメントは、10日にわたり連続的に回転させて巻き上げを行い、手巻きムーブメントは、1日おきに完全に巻き上げられます。このような“慣らし運転”を行うことで、潤滑油を適切に浸透させていきながら、歯車とカナを完璧に噛み合わせていくのです。
品質保証のプロセスは、広範にわたる厳しい最終検査をもってすべてが終了します。最後にもう一度、ムーブメントを完全に巻き上げて、日常使用を想定した各種の適合検査を行います。精度を測定し、機能と外観をチェックし、一連の特別な検査によって空気抵抗や防水性を確認します。IWCから出荷されるすべての製品のクオリティには、疑う余地がまったくありません。この一貫した品質保証プロセスによって、将来のIWC製品の所有者に厳格な品質基準の保持を約束しているのです。
IWCが世に送り出す、すべての時計には特徴的な個性が備わっています。それでも、お客様からお持ちのポケットウォッチや腕時計にさらなるアイデンティティを加えて欲しいとの要望をいただくことがあります。最新エングレーヴィング技術のおかげで、IWCが提供するエングレーヴィングのオプションの範囲は, 無制限といっても過言ではありません。実際、エングレーヴィングによるカスタマイズなら、いかなるご要望にもお応えすることができます。「Engraving(エングレーヴィング)」という言葉は、フランス語の「graver(グラヴェール)」に由来し、「溝を刻む」というのが本来の意味です。木材や石、象牙、金属などに絵や模様、あるいは装飾や文字を彫り込むことは、時計に味わい深い陰影を与え、一個人の特別な想いを永遠に残すために有効な手段です。現在IWCでは、この古くからの技法を可能な限りそのままの形で受け継いでいます。このように、「ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー“クルト・クラウス”」や「グランド・コンプリケーション」の裏蓋に刻まれたような細密画の傑作は、このようにして後世のために描かれたのです。さらには、イニシャル、日付、家紋、会社のロゴ、個人的な献辞などのエングレーヴィングを施すことによって世界でたった一つしか存在しないIWCの時計へと姿を変えるのです。
IWCのアフターサービス部門には、50人ほどの修理やオーバーホールを担当する専門の技術者が働いています。世界各地から持ち込まれる時計は、1868年の創業から現代まで製造年代も様々です。些細な情報ひとつも見落とすことがないように、IWCは1885年以降、市場に出たすべての時計について、その詳細記録を保管しています。時には初代ジョーンズ・キャリバーなどの古い製品が持ちこまれることもあり、経験を積んだ職人ですら、初期の時計製造技術の素晴らしさに感銘を受けずにはいられません。古い懐中時計の誤差が、1日でわずか3秒未満という場合も珍しくありません。
修理部門の中央にあるのがスペアパーツの倉庫です。ここには丁寧に分類された数百万単位の部品が保管されています。言うまでもなく、近年のモデルについては、オリジナルのスペアパーツが今後何年にもわたって保管されます。高性能機械式時計は、原則的に4~5年に一度、コンプリートサービスをご利用していただくことをお勧めいたします。ただし、サービスの必要性は、時計が受けたストレスや使用頻度によって異なります。
高性能機械式時計は、原則的に
4~5年に一度、コンプリートサービスを
ご利用していただくようお勧めします
アフターサービスの終了後、時計は
5日間におよぶ一連の厳しい最終テストに
かけられます
シャフハウゼンに送り届けられた時計は、細心の注意を払って取り扱われます。どのアフターサービスにおいても、時計の磁気を除去する処置が施され、ムーブメントは完全に分解されます。歯車、ピニオン、ゼンマイ、軸受けなどの部品が摩耗していれば、すみやかに交換されます。ムーブメントを洗浄した後、組み立て直し、潤滑油を差したら、ケースに収める前に調整を行います。ケースを密閉した後、必要があればリューズを交換します。最後に、5日間におよぶ一連の厳しい最終テストにかけられます。ここまで長い時間をかけるからこそ、IWCは長期にわたり、精度や防水性を保証できるのです。
使用上の簡単な注意をお守りいただくことで、IWC製品をより長くお使いいただくことができます。すなわち、衝撃を避ける、水中では可動部分を操作しない(ダイバーズ・ウォッチを除く)、ケースを開ける際は専門家に依頼するといった事柄です。
IWCから出荷される時計はすべて永久的に登録保管されています。1885年以降に製造された時計の、キャリバー、使用素材、ケース番号など、すべての詳細が記録されています。近年製造されたモデルに関しては、これらの情報に加え、商品の品番も記録に残されています。時計を受け継がれた方や次にご購入された方は、有償にてIWCの時計に関する正確な情報を得ることができます。2012年7月1日より、鑑定書発行のサービスを承っています。
鑑定書の発行には、IWCシャフハウゼン本社での、熟練した時計職人による入念な検証作業が必要です。ご希望の際は、時計をリシュモンジャパン株式会社 IWCテクニカルサービスセンターまでお持込いただくかご送付ください。直接シャフハウゼン本社に時計をお送りいただくことはできません。
IWCシャフハウゼンの時計職人による入念な検証作業だけが、本物のIWC製品であるかどうかを判定する唯一の方法です。鑑定書には主に品番、ケース、ムーブメントに関する情報が記載され、また時計の特徴に関する情報が含まれることもあります。徹底した検証作業により、一部にIWC正規の部品でないものが使用されていることが明らかとなった場合には、IWCは鑑定書を発行しない権利を有します。
コレクターが所有する特定モデルの市場価値に関しては、恐れ入りますがIWCより情報をご提供することはできません。市場価値は、需要と供給の関係のみでなく、そのムーブメントやケースの状態にも影響を受けるためです。万が一、紛失や盗難などに遭われた場合には、警察への届けおよびIWCへ書面にてご連絡いただきますようお願い申し上げます。当該のケース番号を特別な記録簿に記録し、万が一時計が見つかった場合にはご連絡することが可能です。
時計を引き継いだ後の所有者や
購入者であっても、時計の詳細や当時の
納品先であった正規取扱販売店について
正確な情報を得ることができるのです